ナルメル王のパレット

ナルメル王のパレットはヒエラコンポリスの遺跡で発掘された64cm × 42cmの石版である。年代は前32世紀~前30世紀頃。

「パレット」とは化粧パレットのことで、首が長くうねっている二匹の動物(伝説の生物「サーポパード」)がつくる丸い窪みが化粧の顔料を入れて調合する所になっている。しかしデカすぎるし装飾が多いので儀式用に作られたものと考えられている。
上段の二匹の牛(バト神かハトホル神と考えられる)の間にある、四角(セレク)で囲まれたヒエログリフは、発音「ナル」を表すナマズと、発音「メル」を表すのみで「ナルメル」を表している。
その下の段の左側にはナルメルがいて、下エジプトを象徴する赤冠(デシュレト)を被っている。それに対して右側には首が切られて股の間に置かれた上エジプトの捕虜と考えられる死体が沢山並んでいる。
最下段では雄牛が城壁を破壊している。強い雄牛は王の象徴で、ナルメルの腰に着いている鞭のようなものも「雄牛の尾」という王の象徴である。

こちらの面のナルメルはもっと大きく描かれている。しかも、さっきと違って上エジプトを象徴する白冠(ヘジェト)を被っている。両方の冠を被ることによって上下エジプトの統一を表しているのだ。

右手に振りかざしているのは「メイス(棍棒)」で、こちらも王の象徴である。

上エジプトの神を代表するホルス神が下エジプトを象徴するパピルスの生えた人物を鼻フックすることによって、上エジプトの王が下エジプトを征服したことを表している。また、パピルスの花は1000という数を表していて、それが6本生えているので、6000人を捕虜にしたことも示している。


ナマズの口から出ているものはナマズのヒゲ。

サンダル持ちの近くにある花型の文様は「ロゼット文様」といって王権を象徴するものの一つである。「ロゼット」という言葉はメソポタミアに起源を持ち、薔薇を意味していたが、古代エジプトでは主に蓮華を表し、現在では冬のたんぽぽみたいに放射状に生えた草を意味する。